Polarsは、データ操作において強力かつ高速なツールであり、特に大規模データセットの処理に優れています。この記事では、Polarsを使ったデータ結合(join)について、詳細に解説していきます。データサイエンスやデータ分析において、異なるデータセットを結合して分析を行うことはよくある作業です。Polarsは、その結合操作を効率的に行うための豊富な機能を提供しています。
データ結合とは
データ結合(データの結合)とは、複数のデータフレームを共通のキー(列)に基づいて組み合わせる操作のことです。データベースでの「JOIN」操作と同じ概念で、結合する際に基準とする列を用いてデータフレームを統合します。
データ結合の例としては、顧客情報のテーブルと購入履歴のテーブルを顧客IDで結合し、購入者ごとの詳細な情報を得るといった操作が挙げられます。
主なデータ結合の種類
データ結合にはいくつかの種類があります。Polarsでも同様の種類がサポートされており、以下のものが基本です。
- 内部結合(Inner Join)
- 両方のデータフレームに存在する共通キーのデータのみを取得します。
- 外部結合(Outer Join)
- 結合キーがどちらかのデータフレームに存在するすべてのデータを取得します。存在しない部分は欠損値として扱われます。
- 左結合(Left Join)
- 左側のデータフレームに存在するすべてのデータを取得し、右側に存在しない部分は欠損値とします。
- 右結合(Right Join)
- 右側のデータフレームに存在するすべてのデータを取得し、左側に存在しない部分は欠損値とします。
次に、これらの結合方法をPolarsでどのように実装するかを具体的に説明します。
Polarsでのデータ結合の実装
Polarsでは、join()
メソッドを使用してデータフレームを結合します。基本的な使用方法としては、以下のような流れで結合を行います。
import polars as pl
# サンプルデータフレームを作成
df1 = pl.DataFrame({
"key": [1, 2, 3, 4],
"value_df1": ["A", "B", "C", "D"]
})
df2 = pl.DataFrame({
"key": [3, 4, 5, 6],
"value_df2": ["X", "Y", "Z", "W"]
})
# 内部結合 (Inner Join)
result_inner = df1.join(df2, on="key", how="inner")
print(result_inner)
内部結合(Inner Join)
how="inner"
を指定することで、内部結合を行います。上記の例では、key
列を基準に両方のデータフレームに共通するデータ(key
= 3と4)が結合されます。結果は以下のようになります。
shape: (2, 3)
┌─────┬──────────┬──────────┐
│ key │ value_df1│ value_df2│
├─────┼──────────┼──────────┤
│ 3 │ C │ X │
│ 4 │ D │ Y │
└─────┴──────────┴──────────┘
外部結合(Outer Join)
外部結合を行う場合は、how="outer"
を指定します。これは両方のデータフレームのすべてのデータを取得し、共通でない部分には欠損値(None
)が挿入されます。
# 外部結合 (Outer Join)
result_outer = df1.join(df2, on="key", how="outer")
print(result_outer)
結果は以下のようになります。
shape: (6, 3)
┌─────┬──────────┬──────────┐
│ key │ value_df1│ value_df2│
├─────┼──────────┼──────────┤
│ 1 │ A │ null │
│ 2 │ B │ null │
│ 3 │ C │ X │
│ 4 │ D │ Y │
│ 5 │ null │ Z │
│ 6 │ null │ W │
└─────┴──────────┴──────────┘
左結合(Left Join)
左結合は、how="left"
を指定します。左側のデータフレームに含まれるすべての行が取得され、右側のデータフレームに一致しない部分はnull
が挿入されます。
# 左結合 (Left Join)
result_left = df1.join(df2, on="key", how="left")
print(result_left)
結果は以下のようになります。
shape: (4, 3)
┌─────┬──────────┬──────────┐
│ key │ value_df1│ value_df2│
├─────┼──────────┼──────────┤
│ 1 │ A │ null │
│ 2 │ B │ null │
│ 3 │ C │ X │
│ 4 │ D │ Y │
└─────┴──────────┴──────────┘
右結合(Right Join)
右結合は、how="right"
を指定します。これは左結合の逆で、右側のデータフレームに含まれるすべての行を取得し、左側に存在しない部分はnull
が挿入されます。
# 右結合 (Right Join)
result_right = df1.join(df2, on="key", how="right")
print(result_right)
結果は以下のようになります。
shape: (4, 3)
┌─────┬──────────┬──────────┐
│ key │ value_df1│ value_df2│
├─────┼──────────┼──────────┤
│ 3 │ C │ X │
│ 4 │ D │ Y │
│ 5 │ null │ Z │
│ 6 │ null │ W │
└─────┴──────────┴──────────┘
Polarsの結合操作における高度な使用法
Polarsでは、複数の列をキーにして結合することもできます。これにより、より複雑なデータセットの結合が可能です。また、結合キーとして異なる列名を指定することもできます。
複数の列をキーにする結合
# サンプルデータフレームを作成
df1 = pl.DataFrame({
"key1": [1, 2, 3, 4],
"key2": ['A', 'B', 'C', 'D'],
"value_df1": ["a", "b", "c", "d"]
})
df2 = pl.DataFrame({
"key1": [3, 4, 5, 6],
"key2": ['C', 'D', 'E', 'F'],
"value_df2": ["x", "y", "z", "w"]
})
# 複数列での内部結合
result_multi_key = df1.join(df2, on=["key1", "key2"], how="inner")
print(result_multi_key)
異なる列名をキーにする結合
Polarsでは、結合するデータフレームの列名が異なる場合でも、キーを指定して結合できます。
# 異なる列名での結合
df1 = pl.DataFrame({
"id": [1, 2, 3, 4],
"value_df1": ["a", "b", "c", "d"]
})
df2 = pl.DataFrame({
"key": [3, 4, 5, 6],
"value_df2": ["x", "y", "z", "w"]
})
# 異なる列を結合キーに指定
result_different_keys = df1.join(df2, left_on="id", right_on="key", how="inner")
print(result_different_keys)
この場合、df1
のid
列とdf2
のkey
列をキーとして内部結合が行われます。結果は以下のようになります。
shape: (2, 3)
┌─────┬──────────┬──────────┐
│ id │ value_df1│ value_df2│
├─────┼──────────┼──────────┤
│ 3 │ c │ x │
│ 4 │ d │ y │
└─────┴──────────┴──────────┘
left_on
とright_on
の引数を使うことで、異なる列名のデータフレームでもスムーズに結合できるのがPolarsの強力な特徴です。
結合におけるパフォーマンス最適化
Polarsは、パフォーマンスに優れたフレームワークであるため、大規模データの処理に適しています。しかし、データ量が非常に大きい場合には、いくつかのテクニックを活用してさらにパフォーマンスを向上させることができます。
キー列にインデックスを設定する
Polarsでは、データ結合に使用するキー列にインデックスを設定することで、結合の速度を改善できます。これは、データの検索が高速に行われるためです。
ただし、Polarsは自動的に効率的な結合方法を選択するため、特定のケースではインデックス設定は不要な場合もあります。データのサイズや結合の内容によって、インデックスの有無を検討すると良いでしょう。
メモリの使用量に注意する
大規模データを扱う場合、結合操作に大量のメモリを消費することがあります。Polarsはメモリ管理に優れているため、大量のデータも効率的に処理できますが、メモリ不足の際には以下の対策が考えられます。
- 必要な列だけを選択して結合する。
- データを事前にフィルタリングして、結合に不要な行を除外する。
実用的なデータ結合の例
ここまで、Polarsを使ったデータ結合の基本を説明しました。次に、より実用的なデータセットを用いて、複数の結合操作を組み合わせる例を見ていきましょう。
サンプルデータ: 顧客情報と注文履歴の結合
例えば、ある企業の顧客情報データ(customers
)と、その企業が受けた注文のデータ(orders
)を結合して、顧客ごとの全体的な注文履歴を分析するケースを考えます。
# 顧客情報データフレーム
customers = pl.DataFrame({
"customer_id": [1, 2, 3, 4],
"customer_name": ["Alice", "Bob", "Charlie", "David"]
})
# 注文データフレーム
orders = pl.DataFrame({
"order_id": [101, 102, 103, 104, 105],
"customer_id": [1, 2, 2, 3, 4],
"order_amount": [250, 450, 300, 400, 500]
})
# 顧客情報と注文情報を左結合
customer_orders = customers.join(orders, on="customer_id", how="left")
print(customer_orders)
この場合、顧客情報に基づいて、注文データが結合されます。customer_id
列をキーとして左結合を行っているため、すべての顧客が保持され、注文が存在しない顧客にはnull
が挿入されます。
結果は以下のようになります。
shape: (5, 4)
┌─────────────┬───────────────┬───────────┬─────────────┐
│ customer_id │ customer_name │ order_id │ order_amount│
├─────────────┼───────────────┼───────────┼─────────────┤
│ 1 │ Alice │ 101 │ 250 │
│ 2 │ Bob │ 102 │ 450 │
│ 2 │ Bob │ 103 │ 300 │
│ 3 │ Charlie │ 104 │ 400 │
│ 4 │ David │ 105 │ 500 │
└─────────────┴───────────────┴───────────┴─────────────┘
このように、Polarsを使うことで、複数のデータフレームをシンプルかつ効率的に結合し、必要な情報を素早く得ることができます。
結合後のデータの整形
結合後のデータに対して、さらに操作を加えることで、分析に適した形に整形することができます。例えば、結合後に集計操作を行ったり、データのフィルタリングを行ったりすることができます。
注文金額の合計を顧客ごとに集計する
顧客ごとの注文金額の合計を計算する例を見てみましょう。結合後のデータをgroupby()
でグループ化し、集計します。
# 顧客ごとの注文金額を集計
total_order_amounts = customer_orders.groupby("customer_name").agg([
pl.col("order_amount").sum().alias("total_order_amount")
])
print(total_order_amounts)
結果は以下のようになります。
shape: (4, 2)
┌───────────────┬──────────────────┐
│ customer_name │ total_order_amount│
├───────────────┼──────────────────┤
│ Alice │ 250 │
│ Bob │ 750 │
│ Charlie │ 400 │
│ David │ 500 │
└───────────────┴──────────────────┘
Bobのように複数の注文がある場合は、その注文金額が合計されています。
データのフィルタリング
また、特定の条件に基づいてデータをフィルタリングすることも可能です。例えば、注文金額が400以上の顧客のみを抽出する場合は、以下のようにします。
# 注文金額が400以上の顧客をフィルタリング
high_value_customers = total_order_amounts.filter(pl.col("total_order_amount") >= 400)
print(high_value_customers)
結果は以下のようになります。
shape: (3, 2)
┌───────────────┬──────────────────┐
│ customer_name │ total_order_amount│
├───────────────┼──────────────────┤
│ Bob │ 750 │
│ Charlie │ 400 │
│ David │ 500 │
└───────────────┴──────────────────┘
このように、結合後のデータに対して様々な操作を加えることで、必要な情報を抽出し、さらに深い分析を行うことができます。
Polarsの結合機能の活用例
Polarsのデータ結合は、他のデータ操作と組み合わせることで、非常に柔軟なデータ処理が可能です。ここでは、Polarsの結合機能を活用したいくつかの例を紹介します。
複数のデータセットを結合して時系列データを分析
時系列データを扱う場合、異なる期間のデータを結合し、時系列に沿って分析することがよくあります。例えば、売上データとマーケティングキャンペーンのデータを結合し、売上に与える影響を分析するケースなどです。
顧客の購入履歴を追跡してマーケティング戦略を最適化
顧客の購入履歴を結合し、特定の商品の購入パターンや購入頻度を分析することで、マーケティング戦略を最適化できます。例えば、Polarsを使って、リピーターや高額購入者を特定し、特別なキャンペーンを行う際のターゲット選定に活用することが可能です。
商品カタログデータの結合による在庫管理の改善
在庫管理において、商品カタログデータと実際の販売データを結合することで
、在庫の最適化が図れます。Polarsを用いることで、リアルタイムのデータ分析が容易になり、需要予測や補充計画の策定に役立てることができます。
まとめ
Polarsを使用したデータフレームの結合は、高速かつ効率的であり、大規模なデータセットを扱う際にも非常に有用です。本記事で紹介したように、内部結合や外部結合などの基本的な結合操作だけでなく、結合後のデータ処理も簡単に行うことができます。
Polarsを活用することで、データ分析や機械学習プロジェクトのデータ前処理をスムーズに進めることができるでしょう。